漫才と並ぶお笑いのネタといえばコントです。最近の若手芸人のコントはクオリティが尋常じゃありません。
練りに練られた緻密な台本や、強烈なキャラクター、斬新な発想やスタイル、日本語のあり方を変えてしまうようなものまで、新しいお笑いを創造する優れたコント職人たちが続々と出てきています。
ここでは、まだ今のところきっかけ待ちだけれども、とにかく面白いのだからいつかはきっとブレイクするに違いないと思うコント職人たち10組を取り上げてみたいと思います。
アキナ
2012年結成 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属
ツッコミ担当の秋山と、ボケ担当の山名のコンビ。
元々は2008年に結成された「ソーセージ」というトリオとして活動し、3年目にしてABCお笑い新人グランプリ優秀新人賞を受賞、関西ローカルの深夜番組のMCに抜擢されるほどでしたが、メンバーの1人が暴行事件の不祥事を起こして脱退、残った2人であらためて結成したのがこのアキナというコンビです。
アキナは、『キングオブコント』決勝大会に2014, 15,17と3度出場、14年は『THE MANZAI』で3位、16年は『M-1グランプリ』の決勝大会に進出するなど、毎年大きな賞レースに勝ち残り、漫才でもコントでも高い評価を得ています。
特に彼らが強烈な印象を残したのは、2017年の『キングオブコント』で見せた、「怖い先輩」のネタでした。
コントというよりほとんどサイコホラーのような世界観のネタですが、こういう笑いと恐怖が混ざり合っている絶妙なところを狙ったネタは最近増えつつあるように感じます。可笑しいのと怖いのとがざわざわと拡がっていくような、奇妙な感情になるのが新鮮です。
どのネタもよく作り込まれていて、コント職人としての素晴らしい才能を感じます。キングオブコントでも、そろそろ優勝するんじゃないかなと思います。
お薦めネタは「怖い先輩」以外にも、「三択クイズ」「何者」「やる気のありすぎる学生」等々。
レギュラー出演中:『アキナ・和牛・アインシュタインのバツウケテイナー』(サンテレビ)、『関西発!才能発掘TV マンモスター』(MBSテレビ)、『吉本超合金A』(テレビ大阪)、『週刊ヤングフライデー』(MBSラジオ)
うしろシティ
2009年結成 松竹芸能所属
ボケの金子と、ツッコミの阿諏訪のコンビ。
阿諏訪はお笑いを始める前に日本料理の老舗『なだ万』で6年間修業しており、料理の腕も味覚の鋭さもプロ級で、サイゲン大介という別名で、「一度食べただけでその料理を再現する」という特技をバラエティ番組などで披露しています。
キングオブコントでは、2012、13、15年の決勝大会に進出しています。2015年に出場したときのキャッチフレーズは〈復活のコントプリンス〉でした。たしかにちょっとスタイリッシュなイメージもありますね。
2011年から毎年行われている単独ライブのタイトルからして《うれしい人間》(2013)、《それにしてもへんな花》(14)、《すごいじゃん》(15)、《すばらしく眠い》(16)など、独特のセンスが持ち味のうしろシティですが、単独ライブは発売即完売と言われ、その人気の高さが窺えます。
キングオブコントでは最高位で5位と結果を残せず、ブレイクに至っていませんが、最近TVで見かけるネタがまた独特さを増してきて印象に残り、これはそろそろ結果が出るころなんじゃないかなと思いました。
オススメのネタは「自転車」「娘さんをください」「東京に行くミュージシャン」等々。日常にありそうなシチュエーションがちょっとだけ崩れてヘンな感じになっていく感覚が面白いです。
レギュラー出演中:『ゲームクラブ eスポーツMaX』(TOKYO MX1)、『あはれ!名作くん』(NHK Eテレ)
ジェラードン
2008年結成 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属
リーダーでツッコミ担当の海野と、ボケの西本、かみちぃ、のトリオ。
ロバートの秋山や、ジャンポケの斉藤など、トリオに強烈キャラはふつう1人で充分なものだけど、このジェラードンには西本とかみちぃという、強烈キャラが2人もいるのが特徴。
秋山と斉藤の2人がトリオにいるようなもので、悪ふざけの収拾がつかなくなるような抱腹絶倒のくだらないコントにお腹の皮がよじれます。
特に角刈りの西本はオタクキャラを演じさせたらとてつもないモンスターを演じてくれます。それでもどこかリアルなところに凄味があると思います。
男子ウケする下ネタもちょいちょいあり、見た目もキモい系なので、ブレイクするためにはどうやって女性ファンの支持を得るかにかかっているのかもしれません。
しかし2017年はタウンワーク主催の、次に「化ける」モンスター芸人を決定するオーディションライヴ『BAKE-MON!』で見事優勝を果たしましたし、今後はさらに大きな大会でも結果を残していくと確信しています。
イチ推しのネタは、かみちぃが地下アイドル、西本がそのファンに扮する「握手会」ですが、他にも「満員電車」「喫茶店」「人見知り」等々。
ラブレターズ
2009年結成 ASH&Dコーポレーション所属
放送作家志望だった塚本と、俳優志望だった溜口によって結成されたコンビ。ボケとツッコミの役割は、ネタによって替わります。
ラブレターズと言えば2011年のキングオブコント決勝に進出し、そこで披露したラップで歌われる「西岡中学校校歌」で話題になりました。大会の結果は7位と残念な結果でしたが、「西岡中学校校歌」はそのラップの完成度の高さと面白さからヒットネタとなり、いろいろな番組に呼ばれて披露しました。
2014年にもキングオブコントのファイナリストとなりましたが、そのときは犬の心と対戦して「94対7」という異常な大差で負けたことが逆に話題となりました(この年のみ対戦形式で101人の芸人たちが票を入れるという審査方法でした)。決して悪くない、ちょっとブラックで面白いネタだったのですが、相手のネタや審査方法など、運が無かったのかもしれません。
2016年は3度目のキングオブコント決勝の舞台に歌ネタで臨みましたが、結果は残念ながら最下位となってしまいました。
どうもキングオブコントとは相性が良くないようですね。しかし彼らのネタはよく出来ていて面白いものがたくさんあります。お薦めネタは「キラキラネーム」「野球選手のお見舞い」「初恋」など。
ファイヤーサンダー
201?年結成 ワタナベエンターテインメント所属
和歌山出身でボケの﨑山と、大阪出身でツッコミの藤田のコンビ。まだキャリアの浅いコンビのためか、調べてみてもあまりにも情報が無さ過ぎて、結成年すらわかりませんでした。
今のところ、事務所の公式ページと2人のTwitterなどからわかるのは、関西で結成して東京に出てきたこと、TVにはまだそんなに出ていないけど、ライブには結構出演しているらしいことぐらいでした。
わたしが最初に彼らをTVで見たのは2017年11月に放送されたフジテレビの『ネタパレ』で、そのときのネタ「KPKDBF」が面白くて印象に残りました。
そしてあらためて彼らのネタの面白さと実力を確信したのが、その翌月の12月に放送された『あらびき団』の特番〈あら-1グランプリ2017〉のファイナリストとして出演した際のネタ、「運命の赤い糸」でした。よく出来ていてとても感心し、思わず動画サイトで他のネタも探して見たほどです。
きっとこれから少しずつメディアへの露出も増えてくると思います。
お薦めネタは「運命の赤い糸」「KPKDBF」「無人島」「老夫婦」など。
チョコレートプラネット
2006年結成 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属
ボケとネタ作り担当で妙に肩幅が広い長田と、最近はほぼIKKOのモノマネ一本でTVに出ているツッコミの松尾のコンビ。
長田は美術系の大学を出ていて、陶芸教室の先生もしていたそうで、デザインや造形を得意とし、コントでは彼の造った小道具がよく使われるのが特徴です。
これまで全9回放送された不定期の特番『有吉の壁』では、3回目以降すべてに出演し、その面白さと目立ち方で強い印象を残しています。有吉も「なんで売れないんだろう」とコメントしていました。
また、『キングオブコント2014』で彼らを見た萩本欽一も、「最近の若い笑いにしちゃ、動きがわかってる。決勝はネタが悪くて負けちゃったけど、動きはピカイチだった」と高く評価しました。
その『キングオブコント』では、2008年と2014年にファイナリストに残り、2014年には惜しくも準優勝というところまでいきました。
最近は松尾のIKKOモノマネのおかげで、TV出演も急激に増えていますので、これをきっかけにきっとブレイクしてくれると思います。お薦めネタは、名作「ローマ帝国」、超名作「ポテチ」、他にも「カレー屋」「密室ゲーム」などなど。
しゃもじ
2003年結成 マセキ芸能社所属
ボケのたーにーと、ツッコミのしゅうごパークのコンビで、2人とも沖縄県の出身です。家族を沖縄に残して単身赴任で東京で活動しているそうです。
テレビ東京のネタ番組『にちようチャップリン』によく出演していますが、彼らはその番組(当時は『じわじわチャップリン』)の、第2回チャンピオン大会で優勝を果たしています。
番組にレギュラー出演している土田晃之は自身のラジオ番組で、「しゃもじみたいなめちゃくちゃ面白いコンビがなんでキングオブコントの決勝に進めないの? だれがどういう基準で選んでるの? 審査員がいるの? 番組に呼びたいね」などと過激な発言をするほど、彼らのことを高く評価しているようです。
次のキングオブコントではぜひファイナリストに選ばれてほしいものです。
沖縄の方言をネタにした「英語の授業」は爆笑必至です。なんならこのネタ1本持って全バラエティ番組を一周できるんじゃないかと思うほどです。お薦めネタは他にも、チャンピオン大会の優勝ネタ「バーテンダー」「プロポーズ」「栄冠は君に輝く」などなど。
インポッシブル
2005年結成 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属
おでこが異常に狭くて毛深い、見た目だけで笑えるボケのひるちゃんと、ツッコミのえいじのコンビ。
「コント職人」というカッコいい言葉は似合わない、まるで小・中学生の頭でつくったようなバカバカしいネタを全身全霊でやるのが特徴です。
変顔で笑わせたり、オッパイやお尻、オナラなどの超くだらない下ネタや、必殺技や昆虫など、やっぱり小・中学生の発想みたいなネタを、テンション高く200%の全力でやります。きっと女性よりも、圧倒的に男子に支持されるコンビだと思います。
名古屋の番組『本能Z』で若手芸人を紹介する回では、南キャンしずちゃんに「彼らはボケとツッコミではなく、パワーとスピードのコンビ」と紹介され、今田耕司も「おもろい! 絶対売れると思う」と評価していました。
他にも内村光良やアンガ田中、ケンコバなど熱烈な支持者も多いコンビです。
お薦めネタは、「巨大な昆虫と闘う」「必殺技出ちゃった」「往年のギャグを200%の力でやってみよう」「失格シリーズ」などなど。
ロングコートダディ
2009年結成 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属
ボケとツッコミはネタによって替わったり、Wボケだったりもする、堂前と兎のコンビ。
漫才もコントも両方やるコンビですが、最近はどちらかというとコントが面白いイメージがあります。「ゆったり系」とよくキャッチフレーズなどで言われますが、ツッコミ方がやさしくてゆるいのが特徴と言えるかもしれません。
ネタはよく練られていて、新鮮な発想が面白いです。
ハズれのネタが少ない印象ですが、とくにお薦めなのは「姉ちゃんと弟」「黒魔術」「旅人のおじさん」などなど。
ラバーガール
2001年結成 プロダクション人力舎所属
ツッコミ担当の飛永と、ボケの大水による、独特の雰囲気と世界観がある実力派コンビ。『爆笑レッドカーペット』では〈ポーカーフェイスのコント職人〉というキャッチフレーズが付いていたように、淡々としてあまり感情を大きく出さないコントが特徴。
頭のネジが外れたような脱力キャラを演じる大水と、ハキハキしてテンポのいい飛永の絶妙な組み合わせの独特ワールドがじわじわとツボにハマってきます。
すでにコンビ歴も長く、『エンタの神様』などメジャーなネタ番組にもよく出ているのに、もうひとつブレイクしていない感のある、実力の高さと知名度の低さが釣り合っていない気がします。
2010年と2014年にはキングオブコントのファイナリストにも選ばれています。
あの東京03が高く評価し、ネタはどれもハズレがないほど面白く、完成度が高く、演技力もあるので、あとはなにかきっかけさえあれば一気に人気に火が点くと思われます。
お薦めネタは、「振り込め詐欺」「怖い話」「ゴミの受付センター」「将棋」など多数。
レギュラー出演中:『教えて!アプリ先生』(TOKYO MX)