お笑い芸人には、持って生まれた天然キャラや、あるいは目指すお笑いが異質すぎる、ぶっ飛んだ芸人も存在します。
以前ならなかなか一般的には受け入れられにくい芸風だった、アンダーグラウンドの帝王・ハリウッドザコシショウがR-1で優勝したり、とろサーモンがM-1王者になったり、極めつけは野生爆弾くっきーがブレイクし、彼の個展〈超くっきーランド〉も大成功しました。
あきらかに時代は変わり、特に若者を中心に、ブッ飛んだ芸人たちが受け入れられるようになっていると思います。ついに、彼らの時代がやって来たのです。やはりお笑いこそは型にはまらず、既成概念を壊していくような、自由でアナーキーなものであってほしいと思いますので、この風潮は喜ばしい限りです。
今回はそんな、いつかはきっとブレイクするに違いない、ブッ飛んだ芸風の7組をオススメしたいと思います。
バッドナイス
2013年結成 ワタナベエンターテインメント所属
ボケの常田と、ツッコミの内田によるコンビで、漫才もコントもやっています。ボケの常田は、「バッドナイス常田」として、ピンでも活動しています。
どちらかというとこの、ピンのバッドナイス常田としてのほうが露出が多いのかもしれません。とにかくこのバッドナイス常田のキャラクターが際立っています。
坊主頭でちょっとパンクな感じのシャープな風貌は女子ウケもしそうですが、天然のおバカキャラでしゃべり方も独特のたどたどしさで滑舌もあやしいです。
ネタはシュールなのかバカなのかよくわからない世界ですが、ちゃんと作り込んであって面白いです。
ネタはすべて常田が書いているので、当然ですが、本当のバカではないのでしょう。
静岡SunSetTVの『ドッキリ☆レシピ』というネット番組では、常田のドッキリのかかりっぷりが面白く、それが好評だったのか、今年からは地上波で放送されるというまさかの大出世で、バッドナイス初の冠番組となりました。
見た目良し、キャラ良し、ネタ良しなので、今後ブレイクする可能性大だと思います。
お薦めネタは漫才の「除霊」、常田のピンネタ「売れないパン屋」「最後の瞬間」など。
レギュラー出演中:『バッドナイスのドッキリ☆レシピ』(静岡朝日テレビ)
天竺鼠
2003年結成 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属
ボケの川原と、ツッコミの瀬下で結成。すでに関西ではかなり人気も高いコンビです。
『あらびき団』では番組初期から、川原が「なすび」というキャラクターで、「眠た~い!」のフレーズで人気を博していました。
キングオブコントの決勝大会には2008,2009,2013の3回出場し、結果は6位、7位、3位となっています。
特に2013年は、得意のシュールで破天荒なネタがうまくハマって会場を爆笑の渦に巻き込み、もしや優勝か!?と思うほどの盛り上がりを見せました。
川原の独特の突拍子もないボケは天才的ですし、ワードセンスも面白いです。
現在は東京に拠点を移し、最近では松本人志のAmazon制作『ドキュメンタル』にも川原が出演するなど、活躍の場も拡がりつつありますし、第2の野爆くっきーのようなブレイクをするかもしれないなあ、と密かに期待しています。
お薦めネタは、『キングオブコント2013』で披露した「寿司」「交通事故」、そして「飛行機」などなど。
彼らのコントや漫才を見るたびに「お笑いにまだこんな方法が残ってたのか!」と驚かされます。
どれを見ても、とにかくブッ飛んでいて面白いです。
鬼越トマホーク
2010年結成 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属スキンヘッドでボケの坂井と、ヒゲでデブのツッコミの金野の強面コンビ。
坂井は過去にプロレスラーとして活躍していたこともあり、見た目も芸風もコンビ名も、お笑い界一、イカツいコンビではないでしょうか。
彼らを一躍有名にしたのは、このサイトにも書き起こし記事がありますが、テレビ東京の『ざっくりハイタッチ』の名物企画〈鬼越トマホークの喧嘩を止めよう〉でした。
楽屋で2人が些細なことから取っ組み合いの喧嘩を始め、それを先輩芸人が止めに入ると、熱くなっている坂井が勢いに任せて先輩にまで暴言を吐きます。
リアルに痛いところを不意打ちされて呆然とする先輩に、さらに金野が先輩に謝るふりをしながらもっとキツい、傷口に塩を塗り込むようなことを言う、というパターンのドキュメンタリーコントです。(詳しくは書き起こし記事をご覧ください)

先輩への暴言が、意外に的確な指摘だったりするところが面白く、打ちのめされて言葉を失う芸人や、ときにはガチギレする芸人もいたりして、ハラハラするようなドキュメンタリー的な面白さが特徴です。
鬼越トマホークは、この「喧嘩コント」が有名になったおかげで、バラエティ番組に呼ばれると、この喧嘩コントを始める流れになることもよくあります。
共演者のだれかが止めに入るという流れになるのですが、だれが止めに来てもいいように、彼らはいつも共演者全員のパターンを考えて収録に臨んでいるそうです。
喧嘩のイメージがついていますが、実際はこの2人はとても仲が良く、2人だけでご飯を食べている微笑ましい写真がSNSにアップされたりもしていました。
とくに坂井は金野に心酔しているようで、博多華丸・大吉MCのトーク番組にゲストで出演した際には、
「坂井は金野の写真を携帯の待ち受けにしている」
「金野に彼女がいたが、坂井が別れさせた」
「坂井の嫉妬と束縛が激しすぎることが原因で一度解散した」
等々、他のコンビでは考えられないようなエピソードを明かしました。
喧嘩コントが始まる導入パターンも、「おれ以外のやつとしゃべるな」だの「おれの誕生日をもっと祝え」だの「おれを遊びに誘え」だの、坂井が嫉妬深い恋人のようなことを言いだすのがきっかけになったりしています。
あの喧嘩コントの前振りはきっとネタではなく、本気なんだと思います。
もちろん彼らは喧嘩コントだけでなく、『ぐるナイ おもしろ荘』でも披露した、「油で揚げさせてくれ」や、「バイトを休む連絡」など、見た目そのままのワイルドな漫才もかなり面白いです。
大自然
2015年結成 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属
ボケの白井と、声の良いツッコミ担当の里のコンビ。
里は沖縄県の出身で、同郷の先輩・スリムクラブにも似た、ゆっくりとした間で、やさしく諭すようなツッコミが特徴です。
そのため、「癒し系漫才」と呼ばれることもあるようですが、ほとんどツッコまない里がたまらずふつうにツッコんでしまうところがネタに1か所ぐらいはあって、それが面白かったりもします。
ネタも見た目もコンビ名も個性的な彼らは、1年目からTVで漫才を披露するほど注目を浴びましたが、先輩芸人たちが絶賛するほど独特で完成度の高い漫才をしていました。
すぐにでもM-1グランプリの決勝ステージに上がってきそうなほどの実力の持ち主だと思います。
お薦めネタは、「無人島」「鶴の恩返し」「AEDの使い方」などなど。
ななまがり
2007年結成 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属
ツッコミの初瀬と、ボケの森下によるコンビ。
漫才もコントもやり、M-1とキングオブコントに毎年参加し、2016年には、『キングオブコント』の決勝ステージに進みました。
その『キングオブコント2016』では「正体不明のダークホース」とキャッチフレーズが付けられたほど、その知名度の無さはバツグンです。結果は9位と惨敗でしたが、「ナス持ち上げる時だけ、左利きだよ~」と連呼する異様なネタに、松本人志をはじめとする審査員たちが苦笑いしながら採点していたのが面白かったです。
『あらびき団』では「まーまー強かった」のネタで爪痕を残し、名古屋の番組『本能Z』ではゲストの千鳥が今いちばん面白いと絶賛する若手芸人として紹介されました。
見た目だけでも充分クセの強いボケの森下ですが、実は彼の心の中にはもうひとりの「リトル森下」がいて、そのリトル森下の命令は絶対なんだそうです。これはネタではなくガチのやつです。
冷たいコーラが飲みたくて自販機で買おうとするとリトル森下が温かいコーヒーを買えと命令するので、しかたなく飲みたくもないコーヒーを飲むと言います。もしその命令に逆らうと、「めちゃめちゃ気が滅入る」そうです。
階段を昇るにも「2歩上がって3歩下がれ」などと命令されるので1階分を上がるのに1時間ぐらいかかったというエピソードや、テレビの音量の数字は年齢と同じ数にしなければならないという永続的な命令まであり、老後まで不安なんだそうです。
一方でツッコミの初瀬は、女芸人しか愛せないという性癖の持ち主で、女芸人だけのバレーボールチームの監督も務めていたそうです。見た目も性格も2人してブッ飛んだキャラクターですが、ネタもブッ飛んでいて、ちょっと他にはない面白さがあります。
お薦めネタは「花」「相方の死を看取る」など。
また、森下が「キモお兄さん」というキャラになるコントもあり、「キモお兄さんのテーマ」という曲が配信で販売されています。
ふーみん
2016年よりピン芸人として活動 オスカープロモーション所属
昨年末の『あらびき団SP あら-1グランプリ2017』で、かまいたち、にゃんこスター、野爆くっきー、友近、ハリウッドザコシショウ、風船太郎など、総勢45組、並み居る強敵を倒して王者に輝いたのが、このふーみんです。
一見なんなのかわからない、手作りのお尻と歯の小道具を持ちながら、「なめとーるやつには、ケツの穴から指突っ込んで、奥歯をガタガタ言わせ節」というフレーズを歌い踊る、小学生たちに一瞬で流行りそうな正真正銘のあらびき芸で、審査員のライト東野の熱烈な支持を得、見事王者に輝きました。
あらびき団からは過去に、はるな愛、どぶろっく、鳥居みゆき、ハリウッドザコシショウ、モンスターエンジンなど、様々なブレイク芸人が誕生していますので、このきっかけでふーみんも注目されるといいですね。
ネタは「奥歯をガタガタ言わせ節」以外にも、「クフ王」や「マッハGOGOGO」など、地下芸人の香りが濃厚に漂う、比類ないあらびきネタがあります。
イヌコネクション
2007年結成 ワタナベエンターテインメント所属
ボケの杉浦とツッコミの戸川のコンビ。
杉浦が「生乾木濡彦(なまがわきぬれひこ)」というキャラクター名で、キモくて人をイラつかせる中二キャラを演じながらの漫才が面白いです。オタク系のキモキャラというのは他の芸人もよくやるキャラではありますが、この生乾木のキャラは、もう笑えないぐらいヤバい感じの、リアルにキモい仕上がりが凄いです。
「なんかぁ」と「わかんないけど」を連呼しながら意味不明なことを言い、情緒がおかしくなったり、会話も成立しなかったりして、そもそもの漫才やコントまで壊れていきます。生乾木のキモさを堪能できるネタとしては、生乾木が突然「クイズ出したい」というネタがいちばんブッ飛んでいて、お薦めです。
ずっと生乾きの挙動や情緒が不安定で、全然まともに会話が出来ず、クイズも進まず、会場ではまったく笑いも起こらないのに、それでもキャラをやりきっていく感じが凄いです。
そんな、見ているだけでイライラするリアルキモキャラですが、なぜかずっと見ていられるぐらい面白いです。
※個人の感想です。