平成が終わって令和の時代が始まり、まるでそれに合わせたかのように、お笑いの世界にも新しい時代が到来している。
平成生まれの26歳のコンビ・霜降り明星がM-1の覇者となり、その3か月後にはまたまた粗品がR-1王者となる、前人未到の快挙を成し遂げた。
平成最後の年に起こったこの画期的な出来事は、後にお笑いの歴史を振り返ったときに「霜降り事変」として語られ、令和時代のお笑いの幕開けとして記憶にとどめられるのかもしれない。
ポストダウンタウンは現れるのか
平成はダウンタウンの時代だった
https://twitter.com/18_m00/status/1129759734632992769/photo/1
今から30年前の平成元年、ダウンタウンが東京進出を果たし、初冠番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで』がスタートした。その2年後には革新的なコント番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』もスタートする。
とにかく面白かった。昭和の時代のお笑いを個人商店とするなら、ダウンタウンのお笑いはショッピングモールだった。圧倒的な品数の差があり、まだわれわれが見たことも聞いたこともないお笑いを次々に繰り出してきた。平成のお笑い界は、まさにダウンタウンを頂点とした30年間となり、その影響力は絶大だった。
ダウンタウンの影響によって、漫才やコントは飛躍的に進化・深化し、大喜利やすべらない話(エピソードトーク)が芸人の新たな武器にもなった。
さらに、平成10年代に入り、勝者が一夜にして成功を手にする『M-1グランプリ』や『キングオブコント』では、お笑いの賞レースが国民的な注目を集める真剣勝負となり、若手芸人たちは徹底して技術やネタを磨き上げ、新たな方法論の創造を競い合い、完成度を高めた。
テレビと芸能界はお笑い芸人が中心となり、お笑いを日本が誇る文化のひとつに数えても良いほどにまで裾野を広げ、定着させ、若者に新たなヒーロー像と夢を与えた。
松本人志に「われわれにない感覚」と言わせた若手コント師
この平成の30年間は日本のお笑い界にとって百花繚乱、猛スピードで進化・発展した充実した30年間だったと思う。
松本人志は『M-1』と『キングオブコント』の両方で審査員を務め、まさにお笑い界の神の席に就いていたが、その彼が平成最後の年の『キングオブコント2018』の王者・ハナコのネタを評して、「われわれにはなかった感覚」と語ったのがわたしには印象的だった。お笑いの新しい扉が開いた気がした。
霜降り明星もハナコも、平成生まれの若者たちだ(ハナコの菊田だけギリ昭和生まれ)。
他にも、平成生まれの20代の若手芸人たちが続々と頭角を現し、その新鮮な感覚の笑いで、お笑い界の流れは変わろうとしている。
千鳥の次のムーヴメント
長らくお笑い界の中心的番組だったテレビ朝日の『アメトーーク』『ロンドンハーツ』もここへ来て、そんな若手芸人を中心にした企画を行い、キャスティングするように変化が起きている。
長年両番組を見続けていたものの、正直、2017年に千鳥をブレイクさせたのを最後に、その後は停滞気味、企画も出演者も新鮮味が薄れたマンネリ感があった。
しかし最近は、霜降り明星を筆頭に、宮下草薙、四千頭身、EXIT、ガンバレルーヤ。そしてついには金属バットまで引っ張り出して、若手主体に切り替えてきたように見える。
これは歓迎すべきことで、久しぶりにまた、両番組を見るのが毎週楽しみになった。
そんな「令和」の時代のお笑い界をリードしていきそうな、若手芸人10組について書いてみたいと思う。
霜降り明星
https://www.instagram.com/p/Bq7THvWgd7o/
4月からテレ朝でスタートした『霜降りバラエティ』には、正直驚いた。深夜とはいえ、M-1優勝からわずか4カ月での、東京の冠番組スタートである。
しかもプロデューサーの加地倫三を筆頭とした『アメトーーク』『ロンハー』のスタッフが集結した番組である。同時に他曜日で始まった『テレビ千鳥』(スタッフも共通)が千鳥初のテレ朝の冠番組であることからも、その霜降り明星の異例のスピード出世が際立っている。
粗品が才能の塊であることは誰もが認めるところだが、それでいて決して尖ったお笑いはやらないし、相方思いで母親思いのイメージもあり、好感度も高い。
ネタだけでなく、バラエティでのあの落ち着き払ったトークにはさらに驚かされる。自信に溢れているのかなんなのか、カッコつけてないところが好感がもてるし、トーク力も満点。一方で、意外にビビりのため、その絶叫するほどのリアクションの大きさが、普段のクールなイメージとのギャップでさらに面白い。
一方のせいやは超天然だけれど、お笑い界での「天然」は「天才」とほぼ同義語のようなものだ。昭和っぽい芸風が逆に新鮮でもあるし、『人志松本のすべらない話』でMVSを獲得した、トークの爆発力も持ち合わせている。
そりゃ、こんな2人が組んだら、向かうところ敵なしに違いない。
宮下草薙
https://www.instagram.com/p/BxcQI-xH7B4/
キャラクターの異様さで群を抜いているのが宮下草薙の草薙だ。わたしは彼がとにかく好きだ。彼らもまた、ここのところテレビ出演が激増している。
2018年元日の『ぐるナイ おもしろ荘』に出演し、そのネガティヴ思考で怖い妄想に陥っていくネタの面白さで注目を集めた。
さらにAbemaTV『チャンスの時間』では、ロケ中にコンビで喧嘩を始めたり、カメラの前で草薙がブチ切れる様子は衝撃的に面白く、それから敢えて苦手なロケを何度もやらされることになった。
相方の宮下も変に笑いにストイックで、草薙を管理・教育して追いつめていく性格異常が『ゴッドタン』などで明らかにされ、2人ともに個性の強いキャラであることも判明した。最近は仲の良いコンビ芸人が増えている中で、カメラの前で素の険悪な様子を見せるコンビは逆に貴重な面白さがある。
草薙は『アメトーーク』『ロンドンハーツ』に単独で呼ばれることが増え、千鳥ノブやフルポン村上という大先輩に対してタメ口でキレる様が爆笑をさらった。計算ではなく、笑いを取るためでもなく、窮鼠猫を噛むような、追いつめられたときのストレスの爆発力の凄まじさが彼の魅力だ。
四千頭身
https://www.instagram.com/p/BgqdWbwjRDh/
その草薙に嫉妬を感じていると言うのが、四千頭身の後藤だ。
21歳という若さながら斬新で完成されたネタで颯爽と登場し、『オールナイトニッポン』のレギュラーとなり、「芸能界にもファンが多い」という紹介のされ方もされ、実力も人気も揃った若手としていきなりスポットライトを浴びた。
その中心人物でもある後藤だったが、最近は『アメトーーク』『ロンハー』に草薙と共演することが多く、少しキャラが被っている後藤は完全に草薙にお株を奪われる結果に。
早くも壁にぶち当たっているが、売れるのも悩むのも人一倍早く経験してしまっているのは才能豊かな芸人だからこそだと思う。これからまた新たな一面を見せてくれることを期待している。
ガンバレルーヤ
https://www.instagram.com/p/BsFwQConGiC/
もうすっかりブレイク芸人として定着し、「将来の夢は『イッテQ』に出ること」と言ってから1年も経たないうちにその夢を実現してしまうという順風満帆ぶり。もしかすると、今年あたり24時間テレビでマラソンランナーに選ばれたりするんではなかろうか。
彼女たちの特徴は、その見た目の面白さだけでなく、平場でのエピソードトークが滅法面白く、女芸人でこれだけ面白いトークが出来るコンビをちょっと他に思いつかないほど。咄嗟の返しも、よしこもまひるも共に上手く、リアクションもよく、バラエティにもロケにも引っ張りだこの理由がよくわかる。
あまりテレビで披露する機会が無いのが残念だが、彼女たちの一種異様なコントも、独特の魅力がある。
ハナコ
https://www.instagram.com/p/BxgfucCn4FJ/
『キングオブコント』を制したハナコのコントは、単に面白いだけでなく、新鮮な切り口や新鮮な展開という、新鮮さに溢れたものだった。
だからと言って、決してシュールなものでもややこしくひねりまくったものでもなく、直球でわかりやすいのが特徴だ。
ネルソンズ、ジェラードン、トンツカタンといった実力派コントトリオもブレイク寸前であり、「コントトリオ」のブームももしかすると来るのかもしれない。
ロングコートダディ
https://www.instagram.com/p/Bw9jC_hnIk5/
結成10年目のロングコートダディは、コントも漫才もこなす多才なコンビ。独特のゆるい空気感のあるネタはクオリティが高く、斬新で面白い。
特に堂前は、関西テレビ『千原ジュニアの座王』に度々出演し、トーク、大喜利、モノボケ、モノマネ、ギャグなど、芸人の総合力が試される対決で何度も優勝を果たし、若手の中では圧倒的なお笑い身体能力を見せつけている。
EXIT
https://www.instagram.com/p/BxEvAccHZJq/
兼近とりんたろうによるチャラ男漫才コンビEXITもメディアの露出が激増している若手だ。
ひと昔前ならビジュアルのポップさと、チャラ男キャラでまずは若者人気を得る、というコースをたどったかもしれないが、今の時代はもはやそんな単純な売れ方はさせてもらえないようだ。
EXITの場合、「チャラ男を演じてるけど実は苦労人で、それぞれベビーシッターと老人ホームでバイトをしている、実は真面目で、全然チャラくないめちゃくちゃいいやつ」という、初めからすでに一周回った後のようなバレかたをしたキャラとして支持を得るという、新しい売れ方をした。
逆に言えば表面的な面白キャラを演じて売れるのはもはや難しく、よりリアルな人間味が漏れ出してしまっているほうが面白がられるという時代なのかもしれない。
金属バット
https://www.instagram.com/p/Bw60GWwgvWK/
平成生まれではないが、EXITの明るいポップなイメージとは真逆の、異様な風体と言動でアブナい匂いをプンプンさせた若手コンビが金属バットだ。
行儀が悪く、テキトーで自由なキャラは、ネタにも言動にも溢れているし、好き勝手に営業活動までしてよしもとルールを無視したため、劇場に出禁になり、干されていた過去もある。
今どきめずらしいタイプだが、その希少さに加えて、なぜか憎めないのが彼らの特長でもある。
先日は『アメトーーク』についに初出演を果たしたが、見ているこっちが心配になるぐらい普段通りでテキトーで態度が悪い、まったくブレないキャラを見せつけた。共演した狩野英孝が「あの自由な、ロックな感じが羨ましい」と評したほど。
いま一番ハラハラさせる、「見たくなる」コンビかもしれない。
たくろう
https://www.instagram.com/p/BueGkMDHQQS/
よしもと所属、結成4年目の若手コンビで、まだまだテレビ番組での露出は少ないものの、昨年はM-1で敗者復活5位という好成績を収めた。
正直、わたしは敗者復活戦に残った16組の中で、彼らが一番面白かった。
ボケの赤木がテンパって漫才が崩れていく、という一見ぶっ壊れたようなネタだが、これが斬新で面白い。よく出来ていて、3年目ですでに自分たちのスタイルを確立させているのがとにかく凄い。今いちばんネタが見たい漫才師だ。
かが屋
https://www.instagram.com/p/BuTJLFSngvH/
マセキ芸能社所属、25歳の加賀と26歳の賀屋によるコンビ。
彼らもまたテレビの露出はまだ少ないが、『ネタパレ』で千原ジュニアが彼らのコントを絶賛し、3月には『ENGEIグランドスラム』への出演も果たした。
演技力が確かで新鮮な展開のネタは、スマホを使って笑わせるなど若者らしい要素もあり、新世代のコント職人として今後どんどん注目されていくだろう。『キングオブコント』で優勝する可能性も充分。
以上、令和のお笑い界をリードしていきそうな若手芸人たち、そして注目株でした。
他にもまだまだ楽しみな若手はたくさんいます。
千鳥・サンドウィッチマンを超える存在は出てくるのか?
「令和のダウンタウン」は現れるのか?
令和の時代もまた、楽しくなりそうだ。(goro)
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